日本冶金の技術研究

ステンレス鋼・高機能材の開発

サステナブルな未来を創る、ステンレス鋼・高機能材の開発とプロセスの革新

当社は研究から販売までの一貫体制を活用し、市場のニーズに合わせた最適な製品の開発および提供を行ってきました。技術研究所では最新鋭の分析機器や試験装置も活用し、サステナブルな時代に求められる、付加価値の高いステンレス鋼・高機能材の開発に日々取り組んでいます。

高耐食性ニッケル合金の開発

近年、環境保護の観点から、火力発電所で発生する硫黄酸化物を低減させるためのFGD(排煙脱硫装置)の需要が拡大しています。FGDでは、石灰-石膏法や海水法などにより排気ガスが無害化されますが、FGD内は非常に高濃度の塩化物、または硫酸あるいは両者が混在する極めて過酷な腐食環境となります。


当社はこのような過酷な環境下において優れた耐食性を有するNAS355Nを開発しました。NAS355N(主成分:23Cr-35Ni-7.5Mo-3Cu-0.2N)は高濃度の塩化物に対してCr、Mo を多く配合することでその特性を高め、同時にCuを3%配合することで硫酸(還元性酸)に対しても飛躍的に耐食性を向上させました。Moを7.5%含有する7.5Mo系において、世界初の性能を実現させています。

https://www.nyk.co.jp/files/pdf/ja/news_200619-1.pdf

当社は2020年に中国・北京で開催された「中国第3回スーパーオーステナイト系ステンレス鋼およびニッケル基合金国際シンポジウム」において、NAS355N に関する講演と論文発表を行いました。論文内容が詳細かつ精確であることが高く評価され、専門家で構成される審査委員会において、全員一致により論文1等賞を受賞しております。詳しくは下記URLをご覧ください。

https://www.nyk.co.jp/files/pdf/ja/news_210323_2.pdf

高濃度Cl-と硫酸に対する耐食性が求められる

FGD(排煙脱硫装置)外観写真
FGD(排煙脱硫装置)外観写真
石灰-石膏法の模式図
石灰-石膏法の模式図
論文一等賞の賞状
論文一等賞の賞状

連続鋳造技術の開発

溶けた鋼・合金は、板状にしたときに目指す品質が得られるように条件を整えて鋳造します。当社では厚みが150mmあるいは200mmの鋼片(スラブ)を連続的に鋳造する方式で製造することができます。添加元素の量が多い高機能材は、元素が不均一に分布する「偏析」が起こったり、特別な化合物が析出したりするので、その後の工程を進めるために、また高品質化を実現するために、高度で専門的な金属工学の知識が必要となります。


下の図は鋳造された組織で元素が偏析している様子を示しています。凝固が進んでいく過程でこのようなことが起こります。当社はこのような「偏析」を制御する技術を有し、お客様から非常に高い評価をいただいています。また、この「偏析」に影響を与えるパラメータ(係数)を世界初の手法で測定し、その優れた成果が認められ、一般社団法人日本鉄鋼協会より、2022年の澤村論文賞を受賞しました。詳しくは下記URLをご覧ください。

https://www.nyk.co.jp/files/pdf/ja/news_220930_2.pdf

連続鋳造機(CCM)
連続鋳造機(CCM)
凝固組織
凝固組織
澤村論文賞の賞状
澤村論文賞の賞状

溶接技術の開発

鋼管や構造物などを製造する上では、2つ以上の部材を接合させる”溶接”が不可欠です。特に溶接部は母材と同等以上の強度や耐食性が求められるため、溶接技術は非常に重要となります。当社は実際の製造設備と同等の溶接が可能な実験設備を活用し、溶接技術の開発に取り組んでおり、お客様へのサポートとして、溶接方法に関するアドバイスも行っています。


当社は新たな溶接技術の開発の一環として産学連携にも力を入れており、その成果の一例として、大阪大学との共同研究論文が国際溶接学会の2022年度最優秀論文賞を受賞しております。詳しくは下記URLをご覧ください。

https://www.nyk.co.jp/files/pdf/ja/news_230906.pdf

実験用厚肉管溶接設備
実験用厚肉管溶接設備
スーパー二相ステンレス鋼NAS74NU溶接部の断面EBSD(電子線後方散乱回折法)観察
スーパー二相ステンレス鋼
NAS74NU溶接部の断面
EBSD(電子線後方散乱回折法)観察
国際溶接学会最優秀論文賞賞状
国際溶接学会
最優秀論文賞賞状