社会 Social

安全衛生

製造現場では、労働安全衛生法や企業の自主的な取り組みに基づくさまざまな安全衛生活動が取り組まれています。これらの法令や自主的な活動を組織的かつ体系的に運用管理する仕組みとして、当社ではOSHMS*1(労働安全衛 生マネジメントシステム)を導入し、安全衛生レベルの向上に積極的に取り組んでいます。

*1 OSHMSは、事業者が労働者の協力の下に「計画(Plan)-実施(Do)-評価(Check)-改善(Act)」(通称「PDCAサイクル」)という一連の過程を定めて、継続的な安全衛生管理を自主的に進めることにより、労働災害の防止と労働者の健康増進、さらに進んで快適な職場環境を形成し、事業場の安全衛生水準の向上を図ることを目的とした安全衛生管理の仕組みです。川崎製造所では、2009年1月に厚生労働省の指針に基づいたJISHA方式適格OSHMS認証事業場に認定(認定番号09-14-9)されています。

管理体制

当社は労働安全衛生法に基づき、川崎製造所と大江山製造所の双方で労働安全衛生に関する管理体制を構築しています。
製造所長が総括安全衛生管理者を務め、安全衛生管理者(部長)、産業医を選任し、それぞれの職務は安全衛生管理規則に定められています。また、各製造所において総括安全衛生管理者、安全衛生管理者、産業医、労働組合の代表から構成される安全衛生委員会を1回/月開催しており、法に定められた事項に関し調査審議するとともに、年間計画や各月の取り組みに対する浸透を行っています。

安全成績

当社の安全成績は以下のグラフの通りです。他業種や鉄鋼業全体のレベルと比較して、度数率(休業以上の被災者数の割合)は高い年度もありますが、強度率(休業日数の割合)については低い水準を維持しています。重大な災害については十分に防止できていますが、休業日数の少ない災害をなくすことが課題であることが分かります。この点を踏まえ災害ゼロを目指して安全を向上させていきます。

度数率
強度率

品質

当社は、関連法令や基準を遵守することはもとより、お客さまのニーズや仕様を満たした製品を製造しています。製品 品質の管理と品質向上を実行する方法として、JIS Q 9001/ISO 9001およびJIS Q 9100 の要求事項に合致した品質マネジメントシステムを確立・実施・維持し、かつ継続的に改善します。

品質方針

当社における最終製造工程を担う川崎製造所長は、品質方針を所長方針および活動コンセプトとして定め、製造所全体に伝達し、従業員が理解できるようにしています。品質方針は次の事項を満たすように制定しています。

  1. 製造所の目的及び状況に対して適切であり、製造所の戦略的な方向性を支援する。
  2. 品質目標を設定するための枠組みを与える。
  3. 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
  4. 品質マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む。

品質向上の取り組み

当社は品質の維持向上に向けて、JIS Q 9001で規定されているPDCAサイクルを回しています。すなわち、リスクと機会を織り込んだ計画(P)を立て、品質目標を展開して計画を実行(D)し、改善内容を確認(C)、結果を報告の上マネジメントレビューを受けます(A)。

品質保証体制

当社では、NASグループの品質保証体制を継続的に改善することを目的とし、社長が任命する役員を委員長とする「NASグループ品質保証委員会」を設置しています。本委員会では、主に以下の任務を遂行しています。

  • 品質保証体制改善の方針策定
  • グループ各社の主要な製造拠点に対する監査(原則として年1回)
  • グループ各社の品質保証担当者による協議会(年1回)

標準化活動

当社では、製品の競争優位性を確保するため、JIS等に当社製品を登録する標準化活動を積極的に行っています。過去にNAS64NAS254NNAS354N等の主力製品がJIS化されています。

人権

企業は、自らの事業活動を行う過程で、直接的・間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを理解し、他者の人権を侵害しないよう対応する責任を負っています。当社では、従業員の人権を尊重し保護するため、「行動規範」 「ハラスメント防止規程」を定め、とるべき行動を明確にしています。また、グループ内における組織的、個人的な不正行為に関する相談または通報の適正な処理の仕組みを定め、これらの行為の早期発見と是正を図るため「NASグ ループヘルプライン規程」を設けています。2020年に日本政府において「『ビジネスと人権』に関する行動計画」が策定されて以降、サプライチェーンをはじめとした人権問題が大きな注目を集めていますが、当社でもこうした問題の重要性を認識し、サステナビリティ推進会議において議論を重ね、より良い体制の構築を目指していきます。

ハラスメント防止

当社では職場におけるハラスメントを防止するために、「ハラスメント防止規程」を定め、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児・介護休業などに関するハラスメントおよびそれに準ずる行為を禁止しています。 職場におけるハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける行為であるとともに、職場環境を悪化させる許されない行為です。当社ではハラスメント防止教育を実施しており、2022年度には、当社の全管理職を対象にオンラインでのハラスメント防止研修を実施しました。ハラスメントに関する相談窓口は、メールによる相談受付の他、従業員が気兼ねなく相談できるよう、外部にも窓口を設置しています。また、プライバシーの保護と不利益扱いの禁止事項を設けて被害者の保護に努めています。

ダイバーシティ&エクイティ&インクルージョン

当社は「多様と異質を尊重し、協和の心を以って総合力を発揮する」ことを行動指針の一つとして掲げています。総務省の調査によると、国内の労働人口は2008年をピークに減少傾向にあり、今後も労働力人口の減少は加速すると見られています。そのため、女性やシニア世代の活躍がますます期待されています。また、時代とともに価値観が多様化し、働き方においてもさまざまなニーズがあります。当社は異なるバックグラウンドを持つ多様な考え方が当社の健全な発展に資すると考えており、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンについても推進しています。

障がい者雇用

当社は誰もが生き生きと働ける社会の実現に向けて、障がい者雇用を推進しています。川崎製造所では障がい者の執務スペースを確保し、障がい者の個性に配慮した業務執行体制を整えています。

女性活躍

当社は「積極的な女性採用と多様な配置」および「女性が安心して仕事ができる職場環境の整備の推進」を課題と捉え、以下の取り組みを行っています。 総合職社員の採用のうち、女性の割合を20%以上にすることを女性活躍推進法に関する行動計画の目標としており、2023年4月入社社員14名のうち、4名が女性となっています。
技能職の女性従業員数は2023年4月時点で延べ12名となっています。女性が働きやすい環境を整備するため、電動工具や作業台、リフターなどを導入し負荷を軽減しています。また、女性専用のシャワー室やパウダールームを整備しています。

女性活躍推進法に関する行動計画
1 計画期間2022年4月1日~2025年3月31日
2 当社の課題
  • 積極的な女性採用と多様な配置
  • 女性が安心して仕事ができる職場環境の整備の推進
3 目標
  • 幹部候補社員の採用のうち、女性の割合を20%以上
  • 年次有給休暇の取得率を継続的に70%以上

女性専用パウダールーム

定年年齢の65歳への引き上げ

当社は2023年4月に定年年齢を65歳へ引き上げ、新人 事制度へ移行しました。

【背景】

かつては60歳からいわゆる満額の老齢厚生年金を受け取ることができたこともあり、当社においても60歳以降は引退して過ごされる方も多くいました。しかし、年金の支給開始年齢は65歳となり、また年々寿命も延びて「人生100年時代」とも言われるようになりました。そんな中、60歳以降も就労を希望する方も多く、当社においても、原則として希望者の全員を65歳まで雇用できる再雇用制度を導入しておりました。一方、再雇用制度において60歳以降もそれまでと同様に意欲をもって就業するには、制度面での不備もあり、さらに新卒だけでなく中途で入社される方も多くいる中、現役の従業員を含め年齢による一律的、または比例する取り扱いが適さない場面も増えていました。以上のことから、年功的な運用となっていた資格制度等の廃止を含め人事制度全般を見直し、その時の頑張りや成果をより反映できる入社から65歳までの一貫した新人事制度へ移行しました。

従業員3カ年データ

人材育成

さまざまな事業環境の構造変化を踏まえ、当社が2025年の創立100周年、さらには、その先もレジリエントかつ持続的な成長を遂げるために、人材の育成を進めています。

集合研修

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、WEB会議システムを利用した遠隔集合教育を実施しました。また、活発なディスカッションを促すため、感染防止対策を取ったうえで、対面による集合教育も実施しています。

eラーニングの導入

総合職については自身の能力開発にオーナーシップを持ち、能力開発を支援する制度を整えています。その一環 としてオンライン動画研修を導入しており、従来の集合研修のような時間と場所の制約を少なくし、日常的に学びの 機会が持てるよう、学習環境を整備しました。また、一人一人の業務課題に合わせて学びたい内容を自由選択して学習できる制度としています。

能力開発補助制度

総合職には将来のライン長候補として、または実務の専門家として有益な知識などについて、現在の職務を通じて伸長する部分以外の能力開発を自発的に行うことを促すため、マネジメント、リーダーシップ、財務・会計、ITリテラシー向上などさまざまな分野に関する外部研修や通信教育、書籍購入の費用補助を実施しています。

技能職の教育

技能職については業務遂行に必要な技能を明確にし、不足する技能については具体的な育成計画を作成してOJT・OFF-JTを通じた技能習得を行っています。これらの技能は力量評価表を用いて一覧管理しており、この評価表を基に育成を進めています。
また新入社員については、3か月の集合研修後、OJTとして2年目終了時までのショップアドバイザー制を導入しており、ショップアドバイザーである先輩社員によるマンツーマンでの指導育成を行っています。職場の身近な先輩社員を通じて指導することにより、新入社員の仕事への意欲を高め早期の技能習得を図ると同時に、職場になじめるようフォローを充実させています。
安全教育ではVRを活用し、危険な作業を伴う現場を仮想空間で再現し、安全にかつ、臨場感を持って疑似体験することで、事故の予防や安全意識の向上に努めています。

産業技術短期大学派遣制度

当社は高等学校卒業又はこれと同等の能力を有する従業員が希望した場合、専門の技術教育を施し、学力と識見をかね備えた技術者として育成するため、産業技術短期大学への派遣制度があります。派遣者は2年間、産業技術短期大学にて学んだ後、総合職としてより広い職務での活躍が期待されます。

産技大派遣者 累計実績:16名(1986年以降・派遣中を含む)

ワークライフバランスの取り組み

当社は従業員がやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や家庭、 地域、自己啓発などにかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるようワークライフバランスに取り組んでいます。

主な制度と取り組みについて

総合職については自身の能力開発にオーナーシップを持ち、能力開発を支援する制度を整えています。その一環としてオンライン動画研修を導入しており、従来の集合研修のような時間と場所の制約を少なくし、日常的に学びの機会が持てるよう、学習環境を整備しました。また、一人一人の業務課題に合わせて学びたい内容を自由選択して学習できる制度としています。

メンタルヘルスへの取り組み

従業員一人一人が心身共に充実した会社生活を送るため、メンタル不調の予防・早期発見に向けた取り組みを実施しています。毎年秋に実施するストレスチェックの他、年に1回各職場の安全衛生担当者を対象とした、メンタルヘルスに関する研修を実施しています。

ステークホルダーエンゲージメント

地域社会とのコミュニケーション―社会貢献活動

当社は、川崎製造所・大江山製造所を中心に関連するグループ会社と協力し合いながら、共に暮らす地域社会の皆さまとのコミュニケーションを図り、当社をより深く知っていただくとともに、地域の安心で快適な暮らしづくりと活性化に力を尽くしています。

川崎製造所
稲荷祭

製造所内にお祀りする、稲荷神社の毎年(11月3日)の祭礼。地域の方々などをお招きし、工場操業と地域の安全を祈願するとともに、舞を奉納します。

納涼祭

労働組合との共催により、従業員の慰労および近隣地域の町内会、企業関係者も含めた交流と懇親を目的に、毎年夏季にお祭りを実施しています。

近隣路上清掃作業

川崎製造所前の公道である厳島橋(跨線橋)および殿町夜光線での路上清掃を毎月2回実施しています。

大江山製造所

工場見学

お取引先様だけでなく近隣の小中高生の工場見学の受入も行っています。2022年度は72名に見学していただき、当製造所の事業概要やリサイクル原料の使用による脱炭素促進や環境への取り組みを紹介しています。

クリーンはしだて1人1坪大作戦

天橋立を守る会が主催する、日本三景天橋立の清掃活動「クリーンはしだて1人1坪大作戦」に毎年春と秋の2回、 製造所長を含め20名前後で参加し、地域の名勝の美化、保全に努めています。


株主・投資家とのコミュニケーション

当社はさらなる企業価値の向上を目指し、株主、投資家の皆さまに期末、第2四半期の報告書などを通じて、適時適切な情報開示を行っています。また、機関投資家の皆さまに対して年2回IR説明会を実施し、社長の出席のもと 決算や経営計画に関して説明の場を設けています。
また、2019年には初めて個人株主の皆さまを対象に、川崎製造所において工場見学会を実施しました。これまで、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から開催を見合わせていましたが、2023年度は4年ぶりの開催を予定しています。


顧客とのコミュニケーション

お客さまのニーズに沿った製品提供が求められている中、当社は持続可能な企業であるために、業界トップレベル の品質、納期、コスト、技術やソリューション提供などによりお客さまから信頼され続けることを目指しています。
当社の製品は、お客さまの製造する最終製品の品質・性能に大きく影響を与えるものであることから、事前相談の 段階より、受注、製造、納品、その後のフォローまで適時適切なお客さまとのコミュニケーションが欠かせません。また、グローバル化やカーボンニュートラルの流れなども含めた市場環境の変化に対応しながら、長期的な視点でのお客さまの要求にも真摯に応えています。
ソリューション提供においては、ソリューション営業部を主体としてお客さまとのコミュニケーションを通じて、サンプル を用いた試験・特性確認による製品の選定のアドバイスや、加工、溶接方法の指導、データベースや技術知見を活 用した提案を行っています。さらに、製品の改良や新製品の開発においてはお客さまと密なコミュニケーションを取り、信頼関係構築を図っています。

調達

「責任ある鉱物調達」に関わる国際社会の動きは、紛争鉱物対応に留まらず、サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンス(人権DD)やESGリスクへの対応を含めた鉱物調達にまで急速に広がりを見せており、それに伴い対象となる鉱物、リスク、地域は拡大しています。また、欧米各国では「ビジネスと人権に関する国別行動計画」の策定等を背景として、企業のサプライチェーンにおける人権DD対応を義務化する動きが加速しています。これらを踏まえて、ステークホルダーからはサプライチェーン全体についての人権DDやESGリスクへの対応要求が一層高まっています。
当社においても、「責任ある鉱物調達」の実現に向けて、各国の政策動向や業界動向に注視し、各部署と連携しながら取り組みを強化しています。

紛争鉱物管理

当社は、「紛争鉱物」(金、すず、タンタル、タングステンなどの鉱物自体、またはその鉱物を含む合金原料)に関して、「紛争鉱物管理規則」(以下「規則」という)を定め、管理運用を行っています。原料購入先からは取扱商社を通じてCRT(Cobalt Reporting Template)やCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)などにより紛争鉱物に関する情報を収集し、7年間保管しています。
紛争鉱物に関する対応は「規制輸出等管理委員会」で行っています。同委員会は、規則に定められた各部門の役割に基づいて、紛争鉱物に関する対応状況を確認すると共に、内部監査によりその実効性を検証しています。活動内容は、経営会議でも報告しています。

大江山製造所鉱石ヤード

サプライチェーンにおける人権DD等への対応

新疆ウイグル自治区もしくはウイグル族に対する強制労働に関与した企業からの調達など、人権状況懸念国・地域に関連した原料、副資材などのサプライチェーンに関する人権DDについても、取引先からの情報収集の仕組みなど規則に織り込み、運用しています。
直近では、日本政府から「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が示されており、引き続き、当社としての人権尊重における適切な取り組みについて模索していきます。また、カーボンニュートラルの実現を含めたESGリスクへの対応要求についても、個別に適切に対応しています。

パートナーシップ構築宣言

当社は、経団連会長、日商会頭、連合会長及び関係大臣(内閣府、経産省、厚労省農水省、国交省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、2022年6月に「パートナーシップ構築宣言」を公表しました。
当社サプライチェーンの取引先の皆さまと新たなパートナーシップを構築するため、既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により、取引先様との共存共栄の構築を目指します。その際、災害時等の事業継続や働き方改革の観点からの助言等の支援も進めます。
また、下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業庁振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商習慣の是正にも引き続き積極的に取り組み、「当社と共に歩むものの幸福の増進」という経営理念のもと、持続可能な社会の構築を目指すとともに、「レジリエントカンパニー」への実現へ向け取り組んでいきます。

パートナーシップ構築宣言ロゴ