日本冶金が「ステンレス鋼」を初めて手掛けたのが1935年。
以来、社会の隅々にまでステンレス鋼は行き渡り、今ではなくてはならない存在として、人々の暮らしを支えています。
そもそもステンレス鋼とは何なのか、その特徴や用途についてご案内します。
ステンレス鋼は英語でStainless Steelと書きます。つまり「錆びにくい鉄」という意味です。一般的に"鉄"と言われる「普通鋼」に対し、"クロム"や"ニッケル"を含んだ鋼のことを「ステンレス鋼」と呼んでいます。
このステンレス鋼が英国で初めて市販されたのは1913年頃で、まだ百年そこそこの歴史です。錆びにくいことと見た目の美しさから、まずはナイフやフォークの素材として普及が始まりました。日本でも1918年頃から研究開発が行われていましたが、急速に発展したのが1958年頃からです。それ以降、日本経済の成長に大きく貢献してきました。
日常生活でのステンレス鋼としてまっさきに思いつくのは、流し台やキッチン用品、腕時計、冷蔵庫や電子レンジなどの家電でしょうか。ステンレス鋼は普通鋼に比べて高価なものですが、錆びにくいだけでなく、加工しやすく強度に優れ、高温にも強いといった多くの特性をもっています。それゆえ、美しさや清潔さ、安全性が求められる場所など身近な生活を支えるものとして、充分なコストパフォーマンスと大きな価値を発揮しているのです。
次に、こちらの表をご覧ください。ステンレス鋼の主な用途をまとめたものです。
分野 | 製品(用途) |
建築 | 屋根材、内装(壁面、エレベーター、エスカレーター、他) 外装(カーテンウォール、手すり、他) 開口部(ビルエントランス、ショップフロント、他) 構造材、モニュメント、オブジェ、配管 その他の建築金物(ドアノブ・ロック、蝶番、カーテンレール、戸車、他) |
土木 | トンネル内装板、ダム(構造材、水門、設備)、水管橋、貯水槽、プール槽、太陽熱利用機器、ベンチ、掲示板、道路標識、他 |
家電 | 洗濯機、冷蔵庫、電気食器洗浄機、炊飯器、電子オーブンレンジ、生ごみ処理機などの部材、他 |
厨房 | 食器、スプーン、ナイフ、鍋、魔法瓶、流し台、浴槽、ビア樽、ガス・石油給湯器、他 |
輸送機器 | 鉄道車両(外板・手すり)、自動車(排気系部材、モール)、自転車(フレーム、ディスクブレーキ)、オートバイ(ディスクブレーキ)、飛行機(排気系)、ケミカルタンカー、コンテナー、ドラム缶、他 |
精密機器 | IT機器(ハードディスクケース、シリコンウェハーカッター、フロッピーディスク)、カメラボディ、時計部品、他 |
産業機器 | 食品加工機器(製麺機、製パン機、ビン詰機械、他)、化学プラント、ビール貯蔵タンク、原子力発電、熱交換機、ろ過機、石油発掘パイプ、煙突、他 |
家庭用品 | 郵便受箱、はさみ、灰皿、花瓶、じょうろ、額縁、物干し竿、門扉、他 |
レジャー | ゴルフ用品、スキー用品、釣道具、すべり台、他 |
ここで特に目をひくのは、建築や土木、輸送機器などのインフラ、つまり"公共"性の高い分野に多く用いられていることでしょう。確かに街を歩いてみると、ビルなどの建物や水道関連施設、橋、自動車や電車等々、いたるところでステンレス鋼を見かけます。また、普段目に留まることのない産業分野での活用もめざましく、まさに社会を支える、なくてはならない存在となりました。
たった百年で社会を背負う素材となったステンレス鋼ですが、成熟しきったわけではありません。まだまだ進化を続けています。特に近年注目を浴びているのが、高いリサイクル性です。現在生産されているステンレス鋼の大半がスクラップ等を再利用しており、生まれ変わったステンレス鋼もまたリサイクルすることができます。限りある資源を有効に活用できるため、今後の持続可能な社会の構築に向けて、大きな活躍が期待されています。
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