高温環境

シーズヒーター

シーズヒーターは、オーブンレンジ、電気レンジ、エアコンなどの家庭用機器の加熱器発熱体として、また工業用としては乾燥炉、列車暖房器など、人目につかないところで重要な役割を担っています。ヒーターの構造は、耐熱合金パイプの中心に発熱線を螺旋状に成形したものを配置し、その周囲に電気絶縁性を有する圧縮粉末を充填しています。外周のパイプは高温に加熱され酸化されるので、耐高温酸化性や高温クリープ強度に優れた日本冶金工業のNAS 800LやNAS H840が使われています 。

熱処理炉

様々な熱処理を施す熱処理炉は高温で長時間晒されるために、炉体材料には高温酸化、高温腐食、高温ガス腐食、クリープなどを考慮して最も適切なものを選ばなければなりません。大気環境ではSUS 310Sなどが使われますが、腐食性ガス環境ではニッケル基超合金が必要とされる場合が少なくありません。これらのニーズに合わせて、日本冶金工業ではインコロイ系 (NAS 800NAS 825)、インコネル系 (NAS 600NAS 601)といった各種材料を取り揃えています 。

BA (Bright Annealing:光輝焼鈍)炉

ステンレス鋼などの熱処理は縦型BA (Bright Annealing)炉で行われる場合が多く、これには金属マッフルが採用されています。マッフルは1150℃程度まで加熱されるため耐酸化性に優れた材料で製造する必要があります。さらに、優れたクリープ特性を有することも求められます。これは、マッフル炉が全長で15m程度、重さで3.5㌧以上あり、上部で固定し吊り下げる構造のため自重でクリープ変形が生じるためです。NAS 600NAS 601はこの厳しい環境で使用されています。

縦型BA炉の外観
金属マッフルの外観 (NAS600,2017撮影)

NAS600製BA炉の長期使用実績

長期間使用するとマッフルはクリープ変形が生じ、変形が進行すると取り外し切断することになります。
例えば、SUS310Sで製造したマッフルは、1年間に360mm程度伸びます。炉の停止、再稼働を行うと変形が早く進むことも知られています。

クリープ特性に優れるNAS600でマッフルを製造するとメンテナンス回数を減らすことが期待できます。下の図は、NAS600で製造したマッフルを2年間以上 商業生産に使用し、その変形を追跡調査した結果です。変形はSUS310Sの場合の半分以下、切断処理を1回も実施せず、現在も使用を継続しています。炉の停止、再稼働の頻度の多い厳しい状況においてもその特性が証明されています。

通算運転期間2年以上
<商業運転条件>
運転温度 600~1100℃
製造鋼種 SUS304,SUS301 etc.
雰囲気 AXガス
運転停止回数 78回頻度多い