海洋鋼構造物

海洋鋼構造物

海洋鋼構造物は極めて厳しい環境下に置かれるため、そうした構造物の建設には通常のステンレス鋼に替えて、Cr、Ni、Mo、またNを多量に含有させたスーパーステンレス鋼が使われます。スーパーステンレス鋼のNAS 254N(当社開発鋼種)やNAS 185Nは、耐食性が非常に優れ、寿命やメンテナンスにも利点があるトータルコストパフォーマンスの高い材料です。オーバーレイ用工法としては溶接工法やボルト締め工法などがありますが、いずれの工法にも対応できる優れた被覆用素材です。

海洋環境への耐性は、種々の機関と共同で実暴露試験を実施しており、例えば、港湾技術研究所と共同で実施している試験では厳しい日射・激しい波風に曝されながらその景観を保ち続け、16年経過後も腐食が生じていません。(2018年現在)

港湾空港技術研究所
波崎海洋研究施設 観測桟橋にて(2002年開始)
試験開始
1年
5年
10年
16年

波崎海洋研究施設での長期暴露試験

腐食環境の区分について

同じ1本の鋼管杭であっても、高さにより腐食環境が異なります。それぞれ、海上大気部・飛沫部・干満部・海中部に分類されます。

干満部 海生生物下のNAS 254N(腐食なし)

潮の干満により海水への浸漬と露出を繰り返す領域。海生生物の付着による腐食(すきま腐食)が生じやすい。

海生生物除去前と除去後
飛沫部 NAS 185N(腐食なし)

常に大気中に露出して、波しぶきがかかる領域。付着した海水の蒸発による塩(Cl-)の濃縮、日光による鋼材表面の温度上昇により腐食(孔食、すきま腐食)が生じやすい。

駿河湾大井川沖での長期暴露試験

腐食環境の区分について

一般社団法人 日本鉄鋼連盟 海洋防食・耐久性研究会の一員として国立研究開発法人土木研究所と共同での暴露試験を実施しています。

試験場全景(海洋技術総合研究施設 第3デッキ)
当社の杭が暴露されている様子

川崎製造所内での海洋環境を模擬した暴露試験

テストプラントによるデータ採取

海洋環境を模擬したテストプラントにて基礎データの採取を実施しています。実構造物を作製するにあたり必要となる溶接部も含めた評価を継続しています。

海水暴露試験場
試験体(ステンレス鋼鋼管杭カバー)
試験体
(ステンレス鋼鋼管杭カバー)
飛沫部
飛沫部
干満部
干満部
海中部
海中部
暴露一年後 NAS 254N NAS 185N SUS 316L
海生生物 付着状態
海生生物 除去後 すきま腐食なし すきま腐食なし すきま腐食発生

各種ステンレス鋼鋼管杭の溶接部表面。スーパーステンレス鋼は溶接部を含め、フジツボ等の付着した下でもすきま腐食は発生せず、優れた耐海水性を有します。

その他の試験

さまざまな鋼種の実環境での耐食性を調べるため、海水暴露試験場内にて、小片の暴露試験も実施しています。

大気暴露試験
海水噴霧試験

LNG桟橋の長期使用実績

LNG船バース橋脚防食カバー

NAS 254Nで作られた鋼管用防食カバーは、LNG運搬船の桟橋に29年間使用されています。(世界最長:2019年現在)

NAS 254N製橋脚防食カバー
SUS 316製カバーに腐食が生じ、上部赤枠部を1990年にNAS 254N製防食カバーに更新